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香川靖嗣の會

 第十二回「香川靖嗣の會」 喜多能楽堂  4月1日(土) 小雨
                    開演14時〜終演16時40分 満 員
     能1番・狂言1番

「隅田川」
 シテ/狂女 (梅若丸の母)  香川靖嗣   子方/梅若丸 (亡霊) 大島伊織
  ワキ/渡守 宝生欣哉  ワキツレ/旅人 御厨誠吾
  大鼓/國川 純・小鼓/曽和正博・笛/一噌幸弘
  地頭/友枝昭世 副地頭/粟谷能夫

 本曲は女物狂能で知られ、唯一親子の再会を果たせない悲劇的な能である。演者の
 技量・力量により、観る者の心を打ち見所を涙の虜にさせる劇能と言える。

 喜多流の名手 香川が、持ち味の静謐で控えめな芸により、この悲劇能を観客にどう
 感じさせるか誠に興味深い。更にはワキ・囃子方・地謡や子方の出来が、一層曲趣
 に情味を添える。

 そのポイント箇所は三つある。一つは狂女の登場と渡守の問答場面、次に渡守の舟
 上の哀話語りと狂女の反応、最後は母と吾が子の亡霊との悲しい対面である。

 一つ目のポイント狂女の登場、一ノ松で子を思う心情を吐露し、舞台に入りカケリ
 を舞う。香川の柔らかみのある切ない謡と狂乱の態がよかった、そして渡守との問
 答、香川の抑えた謡と 欣哉の歯切れの良い謡が効果を増した。

 二つ目、舟上の 欣哉の物語が良かった。切々とした語りに聞き入る狂女、その悲劇
 の主を次第に吾が子と悟る過程、渡守に詰め寄り悲嘆に暮れる母。この場面での
 香川の芸 (所作・謡) が、些か地味過ぎて物足りなかった。

 能も劇と考えれば、もっとオーバーな表現があってもよい。確かに 香川は巧い、
 だが、これではお涙頂戴 (この曲に限っては) の域には達せないと思う。

 三つ目、塚の中から聞こえる「南無阿弥陀仏」に母は吾が子の声と確信する。子方
 伊織くんの、透き通った可憐な声が悲しみを増す。この場面での 香川の一連の芸と、
 醸し出す雰囲気は、流石だなと感じ入った。

 子とのすれ違い、茫々とした墓標を眺め、橋掛かりを去って行く 香川の後ろ姿は、
 本曲の悲しみを象徴している。

 囃子 幸弘の笛、終始強い音が鬱陶しかった。地謡は深みがあって調子も揃い、と
 ても良かった。                    上演時間:85分
 

観能記 | 14:30:33

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