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 「香川靖嗣の會」

 第十回「香川靖嗣の會」 喜多能楽堂 
        平成28年4月2日(土) 曇  開演午後2時〜終演5時10分

  能:「野 宮」  狂 言:「八句連歌」
   解 説:ー 野宮の小柴垣 ー 馬場あき子 (歌人) 30分
   見 所:満 員 (400)

 喜多流の人間国宝 友枝昭世に次ぐ実力者で名手、香川靖嗣 (昭和19年7月10日生れ・71歳) が
 主宰する第十回「香川靖嗣の會」。見所には、香川ファン始め能楽評論家等が多数つめかけた。


「野 宮」
 シテ/前 里女・後 六条御息所の霊   香川靖嗣
 ワキ/旅僧   森 常好
 アイ/嵯峨の里人   高野和憲
 囃子方/笛 一噌隆之・小鼓 大倉源次郎・大鼓 柿原崇志
 地謡/地頭 友枝昭世 副地頭 粟谷能夫
    粟谷明生・長島 茂・狩野了一・金子敬一郎・大島輝久・友枝真也
 後見/主 塩津哲生 副 中村邦生

  典拠:「源氏物語」 能柄:三番目・本鬘物  所:嵯峨野 (京都)  季節:晩秋九月
  作者:金春禅竹

 シテ 靖嗣の声は美声ではないが、渋味のある巧みな謡である。今日も特徴ある謡が、前場の
 里女・後場の六条御息所の上品な雰囲気を醸し出した。

 靖嗣の舞も逸品で、上半身の動きを緩やかに抑えると、鍛えられた足腰は揺るぎもしない。
 後場の懐旧の舞「序之舞」はゆったりと大きく、軽い足拍子は静かな舞にアクセントをつけた。

 続く短い「破之舞」は、常の 靖嗣の柔らかみのある舞が、御息所の複雑な情念を表出して、強
 固なものに変身した。そして、火宅の門へ … 。 深い余韻を残す実に見事な終演であった。

 曾て、能楽評論家の 故 大河内俊輝氏 (平成22年11月19日逝去・享年88) が、靖嗣の芸をこう
 評した。「香川は体付きも悪くないし型も悪くない。何よりも真摯だから精進を重ね何時の日
 か、友枝昭世になる日が来る事を疑わずにいる」と。

 確かに、靖嗣は近時一段と芸力・芸格を高めてきている。外見は柔らかだが、内情は芯のある
 極めて強固な精神性を持つ。それが、如実に舞台に表われる。

 ワキの旅僧 常好が、普段の美声・声高を抑え、シテの渋味のある声と同調させた。常好
 (60歳) は、下掛宝生流の総帥故 宝生 閑師 (平成28年2月1日逝去・享年81) に次ぐ、実力者
 である。閑師亡きあと、今後増々の活躍を期待したい。

 掛けた面 (前・後シテとも同一面) は、現代面打の第一人者 岩崎久人 (昭和20年7月5日生れ・
 70歳) 作の「増女」である。美しさと上品さを併せ持つ面で、装束や舞台に佳く映えていた。

 囃子方は、大鼓・小鼓とも名手揃いで本曲の風趣をよく顕わしたが、笛は些か強音で全体の調
 和に欠く面があった。渋味のある笛方が欲しいところであった。アイ語りも、やや声高過ぎた。
 地謡陣は、地頭・副地頭を中心によく纏まっていた。
                                上演時間:115分


「八句連歌」(狂 言)
 シテ/貧者・万作  野村万作   アド/富者・博治  深田博治

 お金の貸し借りを、連句のやりとりで進める趣きのある狂言。表八句を終って、貸し手が借状
 を返すという後味よいお話し。

 借り手の 万作が、何とも味わいのある語りと所作。博治も上手くなったが、まだまだこれから。
                                上演時間:25分


 次回予告:第十一回「香川靖嗣の會」 ー 秋 ー  
     平成28年9月3日(土) 午後2時開演  喜多能楽堂
      演目:能「遊行柳」香川靖嗣 狂言「鐘の音」山本則俊





観能記 | 11:24:23

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