「一字 一句」
   
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観能10年10カ月から

  (その12)
 
 武田文志の「紅葉狩」

  武田文志 (昭和52年生れ 37才) は、観世流の実力者 武田志房の次男で、兄に 友志 (長男 章志は子方)、
  従兄弟に 武田宗典、義兄に太鼓の 小寺真佐人がいる。また、武田宗和 (宗典の父) は伯父、武田尚浩
  (長男 祥照・次男 崇史)も縁戚関係にある。

  文志・宗典らが中心となって、平成20年12月に「七拾七年会」を立ち上げた。メンバーは6人で、他
  に、太鼓の 真佐人・大鼓の 原岡一之・小鼓の 住駒充彦・狂言の 山本則重らがいる。何れも生れが、
  1977年 (昭和52年) 前後の同年代。活動七年目の今年1月、第九回特別公演を開催し盛況であった。

  文志は生来能楽師としての資質に恵まれ、将来を嘱望された若手だが、平成25年10月白血病を発症し
  入院した。しかし、短期間の闘病で復帰、現在は万全だとは言えないが、舞台に積極的に出演してい
  る。

  平成18年8月26日 第二十回「花影会」、文志 28才の時の「紅葉狩」の舞台である。


   シテ:武田文志  ツレ:武田宗典・坂口貴信・坂井音隆
   ワキ:大日方 寛  アイ:山本則秀・山本則重
   笛:竹市 学 小鼓:観世新九郎 大鼓:亀井広忠 太鼓:小寺真佐人
   地頭:岡 久広  主後見:武田尚浩

  舞台上に、次代を背負う俊英達が勢揃いした。シテ 文志は勿論、ツレの 宗典 (27才)・貴信 (29才)・
  音隆 (30才)、ワキ 寛 (38才)、アイ 則秀 (26才)・則重 (28才)、笛 学 (34才)・小鼓 新九郎 (41才)・
  大鼓 広忠 (32才)・真佐人 (28才) ら、そうそうたる顔ぶれである。

  きびきびとした舞台展開で、観ている方も気分爽快である。威勢が良過ぎて、上滑りは戒めるべきだ
  が、こんな能があってもよい。色仕掛けで維茂を籠絡させる、文志の艶かしさは尋常ではない。
                              (平成18年8月27日 記)




観能10年10カ月から


   (その11)

  中村昌弘の「自然居士」

   金春流の 中村昌弘 (昭和53年生れ 36才) は、山井綱雄に次ぐ流儀のホープと言ってよい。昌弘は、
   中央大学法学部を出て、平成13年23才で能楽師となった。彼の猛練習振りは有名で、相応の資質
   も備えているので将来が楽しみだ。
   昌弘のシテ舞台は、平成16年「舟弁慶」18年「黒塚」21年「芦刈」「乱」23年「葵上」24年
   「鵜飼」「邯鄲」25年「自然居士」26年「巴」「鵺」と観てきた。経験を積む毎に、着実に地力
   を付けてきている。
   彼の後援会も結成され、いよいよ今年4月25日「金春流能楽師 中村昌弘の会」を立ち上げる。
   公演の曲目は「融」小書:クツロギで、大いに期待したい。

   平成25年10月6日、金春会定期能 (国立能楽堂) での、「自然居士」の舞台である。


    シテ:中村昌弘   子方:那須 空  
    ワキ:福王和幸 ワキツレ:村瀬 慧  アイ:野村太一郎
    笛:藤田貴寛 小鼓:住駒充彦 大鼓:安福光雄
    地頭:高橋 忍  主後見:横山紳一

   流儀の若手で元気者 中村昌弘 (35才) の、気合いの入った好舞台であった。加えて、子方を始め
   全三役が素晴らしい働きをした。空ちゃんは、昌弘の小さなお弟子さんだが、姿勢もよく端正な
   雰囲気は、親思いの童女の役割にぴったりであった。

   和幸・慧の人商人コンビが、迫力ある問答と所作で緊張感を盛り上げた。太一郎が、ぐんと成長し
   た演技を見せた。囃子方も地謡陣も、気が入り生き生きとしていた。

   昌弘の常は終始声高に謡うが、今日の舞台では緩急・抑揚を付けて、劇的能をしっかりと演じた。
   欲を言えば、もう少し詞章を明瞭に謡いたいが、型や舞は修錬を積んだ成果が現れていた。
                              (平成25年10月8日 記)




観能10年10カ月から

  (その10)

 味方 玄 の「井 筒」

  京都在住の 玄は、昭和41年生れの48才。観世流の名門・京都片山家一門で、父君は 味方 健師
   (能楽師・能楽研究者) である。本年1月13日に逝去された 片山幽雪師に、内弟子時代から可愛
  がられ、稽古で鍛えられた。玄の端正な芸風は、幽雪師の愛情ある指導の賜物である。

  平成20年7月12日、玄が主宰する 第18回「テアトル・ノウ」東京公演での、名曲「井筒」の
  舞台である。



   シテ:味方 玄  ワキ:宝生 閑  アイ:茂山七五三  
   笛:一噌仙幸 小鼓:成田達志 大鼓:亀井忠雄
   地頭:片山清司 (註:現 片山九郎右衛門)  主後見:清水寛二

  シテ (里の女・紀有常の娘の亡霊) を演じる 玄は41才の若手で、謡や舞の技量に優れ、高い身体
  能力と鋭い感性を持つ。東京公演は昨年秋に続き二回目で、観世流の期待する能楽師のひとりで
  ある。

  この齢で、「井筒」をこれほど美しく舞える人は珍しい。基礎が、しっかり出来ているからで
  あろう。だが、少々気になったことがあるので記しておく。

  終曲近く、地が「 〜 昔男の冠直衣は、女とも見えず男なりけり、業平の面影」と謡うと、シテ
  が袖を返してススキを押しやり、井筒を見込む。この一連の所作が、やや雑であったこと。

  次いで、大鼓がひとつ強く打つと、ここに一瞬の静寂と緊張感が広がる。が、それらが見られず、
  その結果、立ちのぼるシテの激情が希薄に感じられたことである。
                           (平成20年7月14日 記)






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