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観能10年10カ月から

    4. 三老女物

       (その1-4)

        観世銕之丞の「姨 捨」

      観世流銕仙会の当主 観世銕之丞 (55歳) が、老女物の大曲「姨捨」に挑んだ。
      上演時間150分、実に見応えのある立派な舞台であった。
      前シテの里の女は、中年の女性 (面は曲見) で、色無し唐織着流しの地味な出立ち。
      銕之丞の何時もの吠えるような声が影を潜め、柔らかみと芯のある謡いが心地よく
      響く。揺らぎのない上体は、滑るような美しいハコビを生み出す。
      後シテ老女の霊は、姥の面を掛け淡い茶色の入る白装束で、月の妖精と化した清ら
      かな出立ちである。老体ながら老いぼれ感は無く、銕之丞の身体はしゃきっとして
      不自然さも無い。
      見どころの昔を偲ぶ「太鼓序之舞」も、ゆったりと大きく舞って見事であった。
                            (平成24年7月1日 記)
     


       (その1-5)

        香川靖嗣の「伯母捨」

      喜多流の「伯母捨」は、故 粟谷菊生師 (当時72歳) により平成6年復曲上演 (流儀
      では180年振り) された。爾来、大島久見、友枝昭世、高林白牛口二の各師が演じ
      てきた。
      香川靖嗣 (68歳) は派手さの無い芸風だが、技巧的にも優れた能役者で、舞台上に
      独特な雰囲気を創り出す。
      ワキは人間国宝の 宝生 閑 (78歳) だが、病み上がりで艶やかな名調子:閑節 には
      ほど遠かった。アイは人間国宝の 山本東次郎 (75歳)、前場と後場の変容を暗示さ
      せる重厚な語りであった。
      靖嗣の謡はクセのない柔らかい響き、細やかな所作や舞を丁寧に演じて、品のよい
      老女を表現した。
      囃子と地謡が豊かにシテを盛り立てた。一噌仙幸の笛が冴え冴えとした月の光を、
      柿原崇志の大鼓が鋭い夜気を、大倉源次郎の小鼓が円やかな幽光を、そして、
      観世元伯の太鼓に、夜遊の舞の小気味良いリズムを感じて心地よかった。
                            (平成25年4月8日 記)



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10年10カ月 | 08:20:05
観能10年10カ月から
   4. 三老女物


      (その1-2)

       浅見真州の「姨 捨」

     能の秘曲で老女物の最高峰のひとつ「姨捨」、観世流の実力者 浅見真州 (68歳) の、
     平成11年初演以来10年振りの再演である。
     今回は照明に蝋燭の光を使い、薄明かりの中で老女が舞い遊ぶと言う幻想的な演出
     である。燭台が白洲に並び、橋掛りまで延びてその数22。舞台天井の照明を落すと、
     蝋燭の灯りが柔らかく演者をつつむ。
     後場がこの曲の主題となり、姨捨山に捨てられた名もない老女の一生を、月の光と
     ともに詩情的に描く。
     真州はこの後場を、余韻寂々とした舞いの所作で見所を魅了した。上演時間160分、
     秀でた技量・力量に加え気力に満ちた 真州の名舞台であった。
     終演後能楽堂を出て見上げた空に、中秋の名月が恰も舞台を讃えるが如く、光り
     輝いていた。                (平成21年10月5日 記)



      (その1-3)
       
       梅若紀彰の「姥 捨」

     硬質な謡や律儀な舞と型など、梅若紀彰 (55歳) らしさが出た「姨捨」であった。
     常よりやや声を抑え、しっかりと丁寧に謡って曲趣の雰囲気を作った。紀彰の、静
     かなる熱演が見事であった。
     この大曲を、この若さで上演出来た 紀彰の幸せを多としよう。
     地頭 梅若玄祥の存在が極めて大きい。地謡の力で 紀彰が、145分の長丁場を弛む
     ことなく舞い終えたと言ってよい。
     会場の梅若能楽学院会館は、中正面席上部に大窓 (磨りガラス) があり、自然光が差
     し込む。今日は晴天で太陽光が降り注ぎ、舞台は恰も月の光の如く白く輝いた。
     この現象が、曲の情趣を倍加させたのは間違いない。 
                           (平成23年11月21日 記)



10年10カ月 | 06:10:18